ピアノが上達することは、とても嬉しいことです。でも、手の小さい人が必ずぶつかる壁というものが存在します。
中級から上級のピアノ曲では、オクターブや和音が多くなるため、弾きにくくなり強いストレスを感じてしまうのです。
その部分の曲の流れやリズム感が悪くなったり、オクターブの小指側を強く押せず、歌う表現が難しくなったりします。
私自身、手の柔軟性はあるものの小さい手です。それでも、両手共に9度まで和音は掴めます。
ピアニストの中でも、中村紘子さんやマリア・ジョアン・ピリスさんなど、手が小さい方も存在します。
そこで、私の経験や生徒さんへの指導に基いた具体的な解決方法を7つお教えします。
自分の手に合った曲を選びましょう。自分の長所を生かせる曲を選び、オクターブのある曲は極力避けましょう。
無理せず弾ける曲は、弾く時にストレスが少なくなるため、生き生きと曲を表現出来ます。
自分で選ぶのが難しくても、経験の多い先生なら、個人の手や表現力に見合った素敵な曲を選んでくれるはずです。
オクターブや和音だったら、下の音を省きます。
その代わり、メロディーラインを歌うようにキレイに弾きましょう。
多少響きが薄くなってしまいますが、音楽的に弾けていれば、そんなに違和感はありません。
また、和音を分散和音にしてしまう方法もあります。
ただ、その場合、リズムが悪くなりがちなので、手首を上手く使って自然に弾けるように何度も練習しましょう。
本当に小さ過ぎる手の場合は、上の①②の方法を取って下さい。
でも、オクターブが苦手なタイプの主な原因は『手の柔軟性と筋力の不足』によるものです。
日頃から、指のストレッチを習慣にしましょう。よくありがちな、指先だけを開くストレッチは効果が薄いです。
まず、骸骨の手をイメージして下さい。かなり下の位置から、指の骨は分かれているはずです。
ストレッチのコツは、『指の骨の分かれ目(手首上)から開き、手のひらを横に広げる』イメージです。
また、指が反ってしまうとオクターブは掴めません。指の関節を少しだけ曲げた状態で開く練習をしましょう。
イメージとしては、軽く指の関節を曲げてバスケットボールを上からつかむような形です。
また、手の柔軟性が無い人は身体も固いはずなので、身体全体をストレッチする習慣も付ければ更に効果的です。
もちろん左手にもオクターブが出てきますが、右手の方がメロディーのオクターブが多いためミスが目立ちます。
そのため、出来るだけ左手の完成度を上げておきましょう。ストレスを最小限にして弾けるようにしておくのです。
手が小さいと、曲を弾く時に、どうしても右手のオクターブに神経がいってしまいます。脳が右手に集中するのです。
その時に、左手が不安定だと、曲全体が大きく崩れてしまいます。
脳の負担を減らすためにも、左手の完成度を上げることは近道になります。
出版されている楽譜の指使いは、ピアニストが指定したものです。でも、実は、適した指使いは、人により異なります。
輸入楽譜では、身体も手も大きな海外の男性ピアニストによる運指のため、小さい手で弾くのは無理な場所があります。
いくつかの出版社の楽譜を購入し、運指を見比べてみた上で、自分に合う指使いを選ぶのも方法の1つです。
「書いてある指使いをきちんと守って弾かなくてはいけない」というクラシック特有の思い込みは、まず捨てましょう。
手の大きさが違うなら、指使いも変える方が自然です。指使いを自分向けにカスタマイズしましょう。
ただ、『音楽的に弾けること』が条件です。歌えるか歌えないかを、指使いを選ぶ時の判断の基準にしましょう。
先生と相談したり、自分なりの弾きやすい指使いが決まったら、必ず楽譜に書き込み、その通りに練習しましょう。
オクターブが苦手だと、その場所が近付くと緊張してしまい、身体が無意識に固くなります。
そうすると、手がいつもより開かなくなって、結局、弱くなったりミスタッチにつながります。メンタルの問題です。
歌う時に苦手な高音が近付くと、身体や喉が強ばり声が裏返ったりするのと全く同じ現象です。
私は、ジャズダンスやピラティスの経験がありますが、『ストレッチをする時は息を吐きながら』が基本です。
『息を吐くと身体は柔軟性を増す』ということを、常に意識しましょう。
まずは、ゆっくり息を吐きながら、丁寧にオクターブをつかむ練習から始めてみましょう。
『息を吐くこと』がポイントです。息を吐く時には、緊張感も緩められるというメリットもあります。
慣れてくると、指も広がりやすくなり、曲中でのミスも徐々に少なくなるはずです。
オクターブの場所では、『息を止めないで吐く』『上半身をリラックス』この2つを意識しましょう。
私がオクターブを弾く時、特に黒鍵の混じった和音を掴む時には、少しだけ手首を上げて弾きます。
いつものポジションより2センチくらい手首を高くして、斜め上からつかむ感じです。
このやり方が合うかどうかは、個人差があると思います。まずは、色々な角度や高さを試して弾いてみて下さい。
一番自然に弾けるのが、自分に合ったポジションです。自分の身体を知りましょう。案外、突破口があるものです。
私は、色々な生徒さんのピアノ演奏を見てきました。
それぞれ課題があります。指が速く動かない、繊細な音が出せない、リズム感が悪い、暗譜が苦手、という人もいます。
また、表現力不足、感情的過ぎ、テンポが不安定、というケースもあります。最初から全てが完璧な人は少ないのです。
だから、あまり悩まずに、自分の強みを磨きつつ、オクターブに徐々に慣れていって下さい。身体は変わるものです!
皆さんのピアノとの関係が、これから更に楽しくなることを祈っています。
ミント音楽教室
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