誰でも、「歌が上手いね」と人から言われると嬉しいですよね。
そう言われる人は、リズムや音程など基本的なことは出来ていることでしょう。
でも、その言葉は時として「歌は上手いけど心に響かない」というブラックな意味を含んでいる場合もあります。
そこから一歩踏み込んで、人の心に響く歌い方をしたいと思いませんか?
そのためには、意識レベルから変えていく必要があります。意識改革のための7つのポイントを紹介します。
※この記事は、中級者向けです。
皆さんは、歌っている曲について深く考えたことがありますか?
もし、日本語の歌詞であれば、内容も簡単に理解出来るはずです。
それにも関わらず、メロディーの音程やリズムだけ気にして、歌詞は棒読みのまま無造作に歌ってしまう人が多いです。
でも、歌詞は、作詞家が沢山の言葉の中から選び抜いて何度も書き直して、やっと完成させたものです。
つまり、作詞家の伝えたい世界観が、凝縮して洗練された形が歌詞なのです。
だから、もっと歌詞について考えましょう。何度も何度も歌詞を読み込み、その世界を表現していきましょう。
そのために大事なことは、想像力です。忙しい人でも、電車の中、ベッドで寝る時、どこでもイメージ作りは出来ます。
簡単な例だと、歌詞の中に大空があったら、頭の中に真っ青な広い空が見える(感じる)ように意識しましょう。
さらに、歌詞を歌う人の設定を、何歳なのか、女性か男性か、どんな状況なのか、自分なりに考えてみましょう。
そして、役者になったつもりで、歌詞を感情を込めて、セリフのように言う練習をしましょう。
プロモーションビデオの監督のように、歌詞の世界を頭の中で映像化出来たなら、イメージ作業は完了です!
あとは、読み込んだ歌詞にメロディーを付けます。最初は少し崩れますが、練習を繰り返すと馴染んでいきます。
ただし、気持ちを入れ過ぎるとバランスが悪くなるので『全体の1割程度』と覚えておいて下さい。
日本人なら、母国語なので日本語の歌詞は苦労せずにスラスラ読めて当たり前です。
ところが、これが落とし穴です。私達にとって、日本語は身近過ぎて発音を意識する事がほとんど無いからです。
私は、日本語の発音講座を受けた経験がありますが、『あ』の発音でさえ、先生は響きが別格で驚きました。
先生の言葉が立体的なのに対して、私の日本語は平坦でした。プロは流石だと感心しました。
皆さんも、日常会話そのままの普段着の発音で歌っていませんか?
もっと言葉に敏感になり、日本語をキレイに発音するよう心掛けましょう。垢抜けた印象になります。
そのためには、最初は、北原白秋の詞『あめんぼの歌』を練習すると良いでしょう。
これは、役者やアナウンサーの卵が何度も練習する詞で、「あめんぼあかいな、あいうえお」から始まります。
自分では気付かないため、先生に聞いてもらい言葉の響きや口の開け方をチェックしてもらうといいでしょう。
何度も修正していくうちに、コツが分かり、結果的に耳も良くなり、言葉の発音のセンスが磨かれていきます。
余談ですが、髭男dismのボーカルの藤原さんは、歌唱力に定評があります。
でも、『Pretender』をきちんと聴いた時、歌詞の日本語が桁外れにキレイな発音だったので驚きました。
音程の高低差や細かいリズムを歌う時には、ほとんどの人は歌詞の発音があいまいになり響きが落ちてしまいます。
本当に耳の良い人は、言葉にも敏感で扱いが上手だと感心しました。藤原さんの日本語に注目してみて下さい。
皆さんは、カラオケで画面の字幕を見ながら歌っていませんか?
または、合唱や歌のレッスンの時、譜面を持って歌っていませんか?
歌が上手くなりたいなら、ぜひ歌詞を暗譜しましょう。
「覚えられない」と思う方もいるかもしれませんが、『覚える!』のです。
どんなに長い歌詞でも、大体A4の紙に収まる程度の長さです。情報量はそんなに多くありません。
高校受験、大学受験、資格試験など、多くの知識を過去に覚えた経験がある皆さんなら、暗譜は出来るはずです!
暗譜で歌うと、人に伝える力が確実にアップします。視覚に頼らない分、集中力も増します。
アーティストも、コンサートで歌う時には、画面や譜面を見ないで、会場のお客さんを見て歌いますよね。
スピーチで、原稿を読んでいる人と原稿無しで話す人では、同じ内容でも伝わり方が全く違うのと同じです。
もう一つの暗譜のメリットは、譜面を見る時の首の傾きが無くなり、より正しいラクな姿勢で歌えることです。
首が真っ直ぐになると、姿勢も良くなり胸も開くので、吸える息の量も増えます。
また、楽譜を持つ腕の動きから解放されることで、上半身、特に肩周りの力みから解消されます。
視覚から解放され、身体が自由になることで、本当に声の響きが変わるのです。
当たり前のことですが、身体を健康な状態にしましょう。
歌の人が楽器演奏者と違うところは、『自分が楽器』という点で、自分の身体のメンテナンスが大事です。
誰でも、風邪を引いて寝込む、二日酔い、寝不足、疲労などの時は、声が小さくなり、掠れて響かなくなります。
現役で活躍をしている歌手は、ご飯をしっかり食べて、十分な睡眠を取っています。声の質に影響するからです。
若い人や忙しい人にありがちな、サプリだけとか、エナジードリンク、カップ麺に頼る食生活は良くありません。
きちんとした食事には、栄養素だけでなく生物のパワーが入っています。また、疲れた時には、休養を取りましょう。
他にも、水分をこまめに取るなど、楽器として良い響きを保つ努力が大事です。
声を出すには、筋力や柔軟性も必要なので、運動やストレッチも普段の生活に取り入れましょう。
声作りの基本は身体作りからです。十分な食事、運動、睡眠を心掛け、体力的にもパワーアップしましょう。
健康な身体から出される声は、それ自体が明るく響き、パワーを伝えられるものです。
私は、ピアノも歌もやっています。両方の世界を知ると、それぞれタイプが違っているのが分かります。
声楽の人に共通するのは、おおらかさです。話好きで、よく笑う人が多いです。
ピアニストが『内に秘めたパワーを持つタイプ』だとすれば、声楽家は『分かりやすいパワー全開タイプ』です。
ピアノ専攻に比べると、歌の人は長時間の練習はしません。のどの負担になるからです。
そういう点も、性格に影響を与えるのかもしれません。人生を楽しんで見えるのは、明かに声楽の人達です。
美味しいものを食べ、会話を楽しんで、色々なことに感動したり、表情豊かで、何となくイタリア人ぽいです。
歌の世界では、人生の喜怒哀楽が含まれています。また、私生活で色々経験することは、歌に深みを与えます。
歌手には、自分の人生に起こる悲しい出来事でさえ、自分の表現力に変えていくようなポジティブさがあります。
悲観的だと、楽器としての声の響きが落ちるので、声のためにも、日頃から超ポジティブ思考を意識しましょう。
たくさん笑うことは、腹筋を使い一石二鳥なので、オススメです。声のために、意識的に楽しいことを考えましょう。
歌を歌う時、ブレスの仕方やタイミングなど意識する人は多いと思います。
でも、歌う場合に根本的に大事なことは、息のコントロールです。
大人気の『鬼滅の刃』でも、数々の呼吸法が出てきます。映画では、こんなセリフもあります。
「呼吸を極めれば、様々なことが出来るようになる。昨日の自分より確実に強い自分になれる。」
呼吸をマスターすることでパフォーマンスを上げられるのは、歌も同じです。
呼吸法が良ければ、のどの負担も減ります。省エネで歌えて、余裕が生まれます。
そのためには、息の吐き方が重要です。そこで、どこでも簡単に出来る息の吐き方の練習法を紹介します。
口を軽く閉じ、5ミリ位の隙間を開け、スーッと細く長く吐きましょう。
この時、息を同じペースで長く吐きましょう。口の前に真っ直ぐな細い道があり乗せていくイメージです。
ポイントは、『限界まで息を吐くこと』です。空気が無い状態まで吐ききることがポイントです。
息が苦しくて止めたくなりますが、まだ肺に息は残っています。きついけれど、そこを越えるのがポイントです。
息を吐ききると、身体は酸素を沢山取り入れようとフル稼働して、一瞬で大量の空気を取り込むのです。
つまり、その瞬間は最も効率的に息を吸えているのです。それを覚えましょう。
また、息を吐いた最後に痛くなる部分が、声を支えるインナーマッスルです。この場所も意識しましょう。
この練習を繰り返すと、血流も良くなり、自然と息の吸い方も上手くなります。毎日5分間やってみましょう。
たまに、時間を測ってみましょう。目標タイムは、初心者10秒、中級者20秒、上級者30秒です。
ただし、実際の曲では、こんなに長いフレーズのメロディーは出て来ません。
でも、音程の上下が多い曲や細かいリズムの曲を歌う場合は、同じ秒数でも息の消耗が激しく、苦しくなりやすいです。
だから、この練習をして息にゆとりを持たせることは大事で、それは表現の幅を広げることにも繋がります。
ただし、この練習は身体に多少の負担を掛けます。
心臓や肺に持病のある方、貧血気味の人は、座った状態にしたり、無理のないよう回数を少なめにして下さい。
たとえば、楽器の値段にはピンキリの差があり、バイオリンの名器には、一億円を越えるものもあります。
値段だけの差があるのかと聞かれると返答に困りますが、高い楽器の方が響きが豊かで演奏には有利と言えます。
ところが、声は買うことが出来ないし、取り替えることも不可能です。お金持ちでも、声だけは買えないのです。
だから、歌の場合は、自分の楽器(声)が気に入らなくても、一生使っていくしかありません。
でも、手入れを十分して磨き続けると、声は楽器としての価値がものすごく上がる可能性もあるのです。
時間は掛かりますが、自分の楽器をグレードアップ出来るなんて、とってもユニークだと思いませんか?
インタビューで、平井堅さんが「昔は自分の声が嫌で、桑田佳祐さんの声に憧れていた。」と言っていました。
美声を持つ歌手が、そう言っていたのは意外でした。人は、自分と違う声に強く惹かれるのかもしれません。
残念ながら、どんなに練習を重ねて高いテクニックを身に付けても、元々の声質までは変えることが出来ません。
だから、まず、自分の声を好きになりましょう。『自分の声は世界で一点物のオリジナルの楽器』なのです。
個性的な声の人は「変な声」、良い声の人でも「個性が無いかも」と自分の声をネガティブに捉えがちです。
比較せず自己ベストを目指しましょう。自分の声に自信を持つことです。
自己肯定が高い人の方が、声の響きが良くなるのは言うまでもありません。
自分の声を好きになり、テクニックと表現力を磨いていけば、どちらのタイプも魅力のある声になるでしょう。
アーティストの歌い方は、格好良いのでつい真似したくなってしまいますよね。
YouTubeでも、ボイストレーナーなどによる歌い方の解説動画が沢山あります。
それを見ると、「すごく耳が良い人だな。ここまで分析するのには、時間も掛かるだろうな。」と感心します。
でも、動画を参考にするのは良いのですが、そっくり真似して歌うことを最終目標にするのはやめましょう。
その歌い方はアーティスト独自の表現だからです。他人の世界観を真似た歌からは、その人の個性が消えてしまいます。
ここから裏声、次はエッジボイス、この音はビブラートで、と歌うのも、音楽的とは言えず不自然です。
うまく真似出来ても、感性が借り物なので人の心には響きません。(物真似芸人になるなら、話は別です。)
皆さんは、広瀬香美さんのYouTubeの『歌ってみたシリーズ』の『マリーゴールド』を見たことがありますか?
あいみょんの『マリーゴールド』とは、まるで印象が違っていて、リズミカルで元気な曲に変わっていました。
でも、広瀬さんが、自分のイメージで自由に生き生きと表現していたのが、とても素敵でした。
せっかく歌の基礎が出来ているなら、自分の表現で歌いましょう。意識改革をしていけば、歌も変わるはずです。
ミント音楽教室
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