今回は、「暗譜が苦手」という人のために暗譜の仕方を紹介します。
ピアノの楽譜は音がたくさんあり、他の楽器の楽譜に比べて複雑です。暗譜が大変なのは当たり前です。
でも、私が習った先生達は「暗譜してきてね」の一言だけで、誰一人やり方までは教えてくれませんでした。
また、不思議なことに、ピアノ専攻の人達同士で「どうやって暗譜してる?」と話題になったことすら無いのです。
だから、今回の方法は、私が試行錯誤しながらたどり着いた覚え方です。ぜひ、実践してみて下さい。
分かりやすくするため、青山学院大学の陸上顧問の原監督にあやかって、それぞれの方法に大作戦を付けてみました。
脳トレにもなるので、ぜひ暗譜にチャレンジしてみましょう。
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いわゆるスポーツ根性的なトレーニングです。練習回数や時間を増やすことによって記憶を強めます。
練習時間が増えると、身体に覚え込ませることが出来ます。ほとんどのピアノ経験者が行っている暗譜方法です。
ただ、一気に沢山練習するより、朝練や隙間時間など練習時間を細かく分けた方が、記憶がより定着します。
『小まめに練習すること』これがポイントです。
バイオリニストの千住真理子さんの本を読んだことがあります。
真理子さんが子どもの頃、コンクールの難しい課題曲が弾けなくて困っていました。
そんな時、音楽畑ではない学者のお父さんの発案で、楽譜を細かく区切って練習したら弾けるようになったそうです。
暗譜する段階では、大体弾けているのですが、細かい部分までは正確に覚えていないものです。
だから、曲を4小節(又は8小節)に小間切れに区切って、各部分を完璧に弾けるように練習します。
細部のパーツを念入りに整えていく作業です。
難しい場所以外で暗譜しにくい場所は、曲調が変わるつなぎ目の部分です。
つなぎ目の前後だけを、止まらず同じテンポで弾けるよう、何度も何度も練習しましょう。
つなぎ目は何ヵ所もあるので、全部の場所をしっかりと練習しておきます。
地味な作業ですが、ここを100パーセント確実にしておくことで、曲の流れがスムーズになります。
本番などの緊張で、いつもは簡単に弾ける場所の記憶が飛んでしまうことがあります。そのための対策法です。
ダーツの旅大作戦とは、全く当てずっぽうで、あらゆる場所から弾いていくという練習方法です。
まず、目をつぶり楽譜を適当に指差し、その場所から弾くのです。パッと目に付いた場所からでも構いません。
フレーズの途中からだったりすると、かなり弾きにくいはずです。何度も色々な場所から弾く練習をしておきます。
この方法は、一瞬忘れた時の記憶の立て直しにも役立ちます。つまづきそうになっても、弾き続けられるのです。
過去に教えた生徒さんの中には、イラストの得意な子がいました。
その生徒さんは、曲のあちこちに表情や仕草などを書き込んで、見るからに楽しそうな楽譜になっていました。
でも、この方法は、誰にでも真似出来る訳ではありません。
そこで、絵の才能が要らない、視覚を使った誰でも出来る記憶法を紹介します。
まず、楽譜を一部余計にコピーしましょう。次は、マーカーを用意して、音符と音符を大胆につないでいきます。
左手、または声部によって色を変えると分かりやすいでしょう。
星座、又は折れ線グラフのようにも見える形を書くことで、音楽を視覚的に捉えることが出来ます。
音の上下感覚も養えますので、仕上がったあとも何度も見て、その形を目に焼き付けましょう。
暗譜したい曲を、何度も聴きましょう。これでもかという位、リピートして耳に叩き込むのです。
暇がある時や移動時間に、いつでもどこでも曲の音源を再生して聴きましょう。
耳にタコが出来る、という表現がありますが、そのくらい繰り返して聴いて下さい。イヤでも流れが身体に入ります。
それでも、覚えられない?まだまだ、再生回数が足りないだけです!
みなさんは、暗譜の時、いつも同じ場所で止まったりしていませんか?
または、先生に書き込みしてもらっているのに、同じ間違いを繰り返していませんか?
どんなに先生が楽譜に書き込みや印を付けてくれたとしても、案外、意識出来ていないものです。
私は、生徒さんが曲を弾いたあと、こう言います。「今から、記憶力テストをします。どこを間違ったでしょうか?」
生徒さんが当てたら「当たり!じゃ、次のレベルのテストです。どんな風に間違ったでしょうか?」
そこで、生徒さんは黙って考えます。「一オクターブ上で弾いちゃった」「ここを飛ばしちゃった。」と答えます。
実は、このやり取りが大事なのです。自分の頭で考えて言葉に変換するだけで、注意への意識がグンと上がるのです。
「ちゃんと思い出せたね。じゃ、もう一回弾いてみよう。」
意外にも、これで直ってしまいます。受け身ではなく、自分自身で考えて認識した上で修正することがコツです。
私は、TOEICも経験していますが、過去問を解く時に、同じような問題で繰り返し間違えてしまうことに気付きました。
それまでは、回答の説明を読むだけだったのですが、どんな風に間違えたかを分析すると、間違いが少なくなりました。
英語でもピアノでも、丁寧に自己分析することは、非常に効果が上がる方法なのです。
歌う大作戦とは、文字通り歌いながら弾く練習をすることです。
ドレミ(階名)で歌うのが理想ですが、大変なら、あー、とかでも構いません。
やってみると、簡単ではありません。歌う時は、ピアノを弾く時とは脳の使う場所が違うため、あえて負荷をかけます。
まず、右手を弾きながらメロディーを歌います。それが出来たら、同様に左手の音でも歌いながらやってみます。
次は、両手を弾きながら、各パートを歌う練習をします。
これは、難しいことですが、この練習で脳も鍛えることが出来ます。
最初は悪戦苦闘していても、回数を重ねると慣れてきて、メロディー以外の声部が聴こえるようになります。
かなり高い音や低い音を歌う時は、1オクターブ上下させて歌いましょう。(多少音程を外しても構いません。)
歌いながら弾けるようになると、脳の余裕が出来ます。耳も更に良くなるので一石二鳥です。
ただ、漠然と暗譜するのではなく、曲の部分それぞれにイメージ付け(マーキング)をしましょう。
例えば、皆さんが、ナビや地図無しで一度しか行ったことのない場所に行かなければならない時どうしますか?
コンビニ、ガソリンスタンドなど、風景や目印になる建物が思い出せれば、ちゃんと目的地にたどり着けますよね。
暗譜も同じです。具体的な目印を付けるのです。小見出しのような言葉でも良いでしょう。
自分なりの曲の風景やイメージを細かく作り込みます。そして、そのイメージを覚えて暗譜の助けにするのです。
『エリーゼのために』を例に挙げます。(ベートーベンさん、勝手なイメージを付けてごめんなさい。)
切ない恋心→2人での楽しい時間(妄想)→切ない恋心→嫉妬(失恋)→切ない恋心
こんな具合に、曲にナビ的な目印(イメージ)を無理やり作り、しっかり流れ(順番)を覚えておきましょう。
暗譜が苦手な人は、そもそも、発表会など特別な時しか暗譜する機会がなくて、その度に慌てていませんか?
普段から、暗譜に慣れておきましょう。毎回は無理だとしても、3ヶ月に一回くらいの頻度で暗譜するようにしましょう。
楽譜を見て弾くのと暗譜で弾くのは、脳の使い方が違います。普段していないから、暗譜するのが難しく思うのです。
余力がある人は、短い曲や簡単な曲を使って、小まめに暗譜する習慣を付けてしておきましょう。
その際は、試してみるという位の軽い気持ちでやってみて下さい。
遊び半分であっても、暗譜でピアノを弾く時、脳は必死に記憶をたどろうとします。負荷をかけるのがポイントです。
ただし、ストレスを感じそうだったら、一曲丸ごとではなく、細かい区切りの部分暗譜にチャレンジしてみましょう。
記憶力のためのウォーミングアップを普段からしていれば、本番での暗譜へのハードルは確実に下がるはずです。
都内では、暗闇フィットネスが密かに流行しているそうです。(現在はコロナウィルスで休業中かも。)
照明をかなり落とし、互いの顔も見えにくくすることで、よりトレーニングに集中する事が出来るそうです。
同様に、暗闇(または夕暮れ)の中でピアノを弾く練習をしましょう。
この練習は、視覚を十分使えなくなるので、触覚や聴覚がより敏感になります。
もし、それが簡単で物足りない人は、遊び半分で、目をつぶってピアノを弾いてみて下さい。
モーツァルトが小さい頃、神童だとアピールするために、目隠しをしてピアノを弾いてみせたエピソードは有名です。
余談ですが、テイラー・スイフト、レディ・ガガなどは、コンサートで会場を向いてピアノを弾いています。
ピアノを弾く手元を見ない(ブラインドタッチ)で、お客さんとアイコンタクトしながら笑顔で歌う姿は、さすがです。
彼女達のように、横を向いてピアノを弾く練習をしてみるのも効果的です。
今まで紹介した10の方法を全て実践すれば、成功確率が上がること間違いなしです!
では、みなさんの暗譜へのハードルが、少しでも低くなることを願っています♪
ミント音楽教室
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