「世界は音楽であふれている」 (映画のセリフより)
映画館で『蜜蜂と遠雷』を観てきました。若い4人のピアニスト達が、国際コンクールでピアノを競い合う物語です。松岡茉優、松坂桃李、森崎ウィン、鈴鹿央士が演じています。原作者の恩田陸さんは、『言葉で音楽の世界を紡ぎ出す』という難しい試みに挑戦しました。その文章からは、ピアニスト達の音楽に対する熱い情熱や、音への研ぎ澄まされた感覚が伝わってきます。そして、全体的には「若さ溢れる青春物語」という仕上がりで、読後は爽やかな印象です。一方、映画は「上質の映像と美しい音で描く『蜜蜂と遠雷』のイメージ映像」という雰囲気です。「映像化は不可能!」と評されたこの小説を、石川慶監督が、斬新なアプローチで撮影をしていました。ナレーションや説明シーンも無く、ピアニスト達の台詞は少なく、短めです。自然の音(雨音、海、遠雷)なども積極的に取り入れ、音楽以外の音にもこだわっています。抽象的なシーン(走る馬、浸水するピアノなど)もあり、アート的な感じもします。余計なものを削ぎ落とし、表情やピアノ演奏のみで、心情を表現しようとする監督の気概が伝わってきます。 演奏シーンのリアルさでは、松岡さんのピアノの弾き方が一番上手だと思いました。本選での松岡さんがプロコフィエフを弾くシーンの顔の揺れ方や息遣い、タイミングなどは本物に近いです。ピアニストの動きを真似したそうですが、彼女は、観察力が鋭く、運動神経や勘も良いのでしょう。この映画は、音にこだわっているので、耳を澄ませて、色々な音を感じてください。
連弾とは、一台のピアノを二人で並んで弾く演奏のことです。手が増える分、曲を複雑にアレンジ出来ます。でも、距離が近いと手が触れたり息遣いも分かるほどなので、嫌いな人とは絶対やりたくないのが連弾です。連弾は、レベルが同じくらいの気の合う同士で弾くと楽しいです。ただ、相手の音も聴きながら演奏するために、一人の時とは違った集中力が必要で、息を合わせて弾きます。二人が互いの個性を少し抑えて歩み寄ることで、普段と違うリズムや音楽性が生まれてくるのも面白さです。ちなみに、ピアノ発表会などで連弾する場合は、細身の人が手前に座ることが多いです。(両方見えるように)映画で、月夜に二人が連弾する場面は、とても楽しげです。月がテーマの曲を次々と弾いていくのです。最初は、ドビュッシーの『月の光』から始まり、楽しいジャズの曲『It's the only a paper moon』に変わります。そのあと、ベートーベンの月光ソナタの第1楽章で静かに終わります。学生時代に、同じように友人とピアノ練習室で並んで即興演奏風にピアノで遊んでいた事を思い出しました。ややデタラメ風ですが、その時に浮かんだメロディーや和音やリズムを、相手に合わせて変えていきました。 弾いていくうちに二人の音楽が混ざっていくのが新鮮で、映画と同じで弾き終わってからすごく笑いました。実際には、本格的にやっている人ほど、練習すべき曲が大量にあるため、ピアノで遊ぶ時間は少なくなります。また、クラシックピアノの人は即興演奏が苦手な人が多いです。楽譜通りに弾く力とアレンジ力は比例しません。例外としては、ドラマ『コウノドリ』の音楽担当、バラエティー番組などにも出ている清塚信也さんがいます。清塚さんは、子どもの頃、長時間の練習を母親に強要され、息抜きにアレンジして弾いていたそうです。超スパルタのお母さんのおかげで、清塚さんのアレンジや作曲の能力が高まったと言えるかもしれないですね。
風間塵(鈴鹿央士)が、練習中に指から出血してしまい、アロンアロファを指に付け練習に戻るシーンがあります。激しい曲を長時間練習すると、衝撃により指の皮膚が割れたり爪が剥がれかかって出血する場合があります。大体、親指の爪の外側です。また、荒れ性や乾燥肌タイプの人は、冬など指先が割れやすいです。練習時、弾きながら「あれ?何で鍵盤が汚れているんだろう?」と思って、よく見ると血だったりします。それまで普通に弾いていたのに、気付いた途端にジンジンと痛くなります。( 反応が遅過ぎますよね? )ピアニストの横山幸雄氏も、応急処置として、瞬間接着剤で皮膚を貼り合わせるそうです。私が指から出血した時は、オロナインを塗ったり、絆創膏を指に巻き、練習は終了します。指先が割れた状態でピアノを弾くと、フォルテの場所などでは飛び上がるほど痛いからです。どうしても練習する必要がある場合は、バンドエイドを貼ったまま弾きます。でも、タッチ感覚も変化し、汗で取れてしまったり、粘着剤が鍵盤に付いてベタ付きます。ちなみに、物を張り合わせる接着剤を皮膚に付けるのは心理的抵抗感があり、いまだに試していません。※あとから、医療用アロンアルファもあることを確認しました。 ミント音楽教室
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