オススメに出てきて、何の気なしに見たらハマってしまった動画がある。
『天才連弾ピアノ小学生衣笠姉妹世界への挑戦』というタイトルのYouTube動画だ。
NHKの『プロフェッショナル仕事の流儀』のようなドキュメンタリー風の作りになっている。
動画は、衣笠姉妹の世界鍵盤2023日本代表選考会当日の様子と、自宅での密着取材を元に構成されている。
ピアノ連弾で世界を目指す衣笠ト奈ちゃん(11才)、衣笠ヘ奈ちゃん(9才)の小学生の姉妹は、圧倒的な存在感がある。
お笑い系の動画なのだが、ピアノ連弾を経験している私から見ても納得の『あるあるポイント』を7つ挙げてみる。
【①相手の顔を見る】
ロバート秋山が演じるト奈ちゃんが、ピアノを弾きながらへ奈ちゃんの横顔をジーっと見つめる場面がある。
あそこまであからさまにしないものの、連弾では、息を合わせるために曲の変わり目で顔をチラ見することはよくある。
弾き終わった時に、顔を見合せてニッコリ笑うのもよくある光景だ。
【②手は大事】
衣笠姉妹がケンカをした時、足から始める。「叩かない!大事な手でしょ!」とママが叱っているのがリアルに感じる。
手を怪我しないように刃物を使わない、手荒れを避けるため洗い物をしない、というのはピアノの世界ではよく聞く話だ。
実技試験などが近い時に体育の授業がバスケットボールやバレーボールの場合、突き指を避けるため見学者が続出する。
運動好きは、それでも一応手袋をしてプレーする。(むしろ難易度が高い?)。それを見て、体育の先生が呆れ顔をする。
【③姉妹が多い】
実際に、連弾やデュオ(2台ピアノ)でプロ活動をしている人には姉妹が多い。
色々な人と連弾をして私が感じたのは、ピアノの先生同士だとしても、ピッタリ合わせることが案外難しいことだ。
音色、リズム感、フレーズの作り方、間の取り方などがミリ単位で違うため、相手の音や感覚に寄せていくことになる。
つまり、自分の音楽性をかなり変える必要があるのだ。相手の特徴を真似て弾く能力には個人差があり、簡単ではない。
ところで、兄弟の遺伝子は、一卵性双生児には及ばないものの40~60%が同じであるという。
練習しやすいという環境に加え、音色や音楽性が似ている点でも姉妹で連弾をすることは非常に有利であると思われる。
【④実は奥の人がリーダー】
連弾は、手前の高音域担当がプリモ(第一)、奥側の低音域担当がセコンド(第二)と呼ばれる。
発表会の連弾では、両者が客席から見えるよう、ト奈ちゃんのように身体の大きな方がセコンドになることが多い。
メロディーラインは主にプリモが担当するが、低音はリズムを刻み、全体のバランスを整える重要な役目をする。
ちなみに、セコンドがペダルを踏む。ペダリングが悪いと音が濁るから、相手のタイミングを正確につかむ必要がある。
地味に見えるが、アンサンブル能力があり耳が良い方がセコンドをやることが多い。実質的なリーダーはセコンドだ。
だから、姉である11才のト奈ちゃんがセコンドを弾いているのには納得だ。
【⑤腕の交差】
初級や普通のレベルでは、腕の交差はあまり出てこないのだが、上級レベルでは、交差が頻繁に出てくる曲もある。
今回は、ト奈ちゃんが高音域に腕を伸ばす交差が非常に多かったが、その反対もある。同時に交差してすぐ戻る場合もある。
互いの腕がぶつからないように、上からとか下からとか交差の方向を楽譜に書き込んで沢山練習することも、連弾の特徴。
【⑥見せ方】
姉妹のママがインタビューで「何を見せるのかが勝負!」と言っている。
本来、ピアノ演奏とは音を聴かせるものだ。観客は耳で演奏を楽しむ。少なくとも、一昔前はそうだった。
けれど、最近は、ビジュアルが良かったり、見せる(魅せる)演奏が出来る方がインパクトが強くて人気が出るようだ。
インスタ映えという言葉があるが、音楽界も視覚的な工夫をしていくことが求められるような時代になってしまった。
その点で、表情が豊かで動きの多いト奈ちゃんの弾き方は非常に独創的であり、見せ方が上手である。
衣笠姉妹のピアノ演奏は、世界大会でも他の参加者の演奏を霞ませ、観る側に強い印象を与えるに違いない。
【⑦弾き方テクニック】
背弾き、寝弾き、女子トーク弾き、舌弾き、踊り弾き、息弾きなど、ト奈ちゃんのテクニックの数々が面白い。
他に何か斬新な弾き方はないだろうか?衣笠姉妹にやって欲しい弾き方を、私なりに色々考えてみた。
●鼻弾き
鼻を使って鍵盤を弾く。(ただし、鼻の低い人や鼻先の柔らかい人には無理。)
●幽霊弾き
鍵盤の下にしゃがんで隠れて、幽霊のように手だけを下から伸ばしてピアノを弾く。
●足指弾き
足の5本の指を自由自在に動かして音楽を奏でる。ぜひ、ト奈ちゃんにやって欲しい。(弾く時に強い体幹が必要かも。)
●回転弾き
椅子の代わりに中華料理店のターンテーブルを足元に設置し、フレーズの間の一瞬に華麗にターンする。
●スライド弾き
スポーツ選手のトレーニング用のスライドボードで、左右に移動しながら弾く。
●目隠し弾き
幼いモーツァルトが、その天才ぶりをアピールするために目隠しをしてピアノを弾いていたのは有名なエピソード。
●アイリッシュダンス弾き(足技?)
ピアノを弾きながら、足ではリズムを刻んだり2人で足の向きを揃えて踊る。(多分、ダンサー並みの身体能力が必要。)
【まとめ】
連弾では、ソロと違って相手に合わせる技術が必要である。
相手に寄せていく微調整が難しい反面、ピッタリ合った時には、楽しさや嬉しさが倍増するのが連弾の醍醐味だ。
衣笠姉妹の今後の活躍にも期待!
【連弾に関する記事】
●ピアノ連弾は楽しい?
https://www.mintpiano.net/blog/43673/
●巻物のような楽譜とは?
https://www.mintpiano.net/blog/44870/
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