ピアノ教室の選び方に関する記事は、ネットでも山のように溢れている。内容が似ているものも多い。
そこで、今回は『ピアノ教師の独断と偏見によるマニアック過ぎて全然参考にならない教室の選び方!』を紹介する。
私は2人の子どもがいるが、仕事上送迎が難しく、ピアノ教室には通わせず私自身が隙間時間に教えていた。
ピアノの先生の多くは、経験上ピアノ関係の様々なネットワークを持っているから、普通の人よりは音楽情報が入りやすい。
従って、ホームページをチェックして先生を選ぶ人は実際には少ない。知り合いや友人や紹介などで頼むことがほとんどだ。
そこで、「もし、見知らぬ土地に引っ越して、本気で子どものために教室を選ぶとしたら?」という仮定で考えてみた。
一個人のピアノ教師の特殊な感覚や視点として、気楽に読んで欲しい。次の15個が私のチェックポイントだ。
【①ピアノ専攻】
やはり、ピアノ専攻の人を選ぶ。他の楽器の専攻や幼児教育専攻の人は避ける。
それは、スポーツの世界で言えば他の競技の人にわざわざ習うようなものだからだ。
シンプルな曲を弾いたとしても、その音質やフレージングの違いは明らか。(その違いは、一般の人には分からないかも。)
【②グランドピアノを使用】
アップライトピアノは、ハンマーの反応スピードが遅いため、上級レベルの曲には不向き。表現の幅も狭い。
使用楽器の種類やブランドからは、先生のピアノへの意識、演奏レベル、経済状況、音の好みなどが色々と推測出来る。
【③ピアノが調律されている】
弦楽器と違って、ピアノは自分で音程を作る必要が無いため、調律が合ってなくても平気なピアノの先生も現にいる。
定期的に調律されていない場合は、音に無頓着なタイプか、調律代が高いので先延ばししている。どちらも問題あり。
ただし、調律が狂っていると言っても、普通の人が気付かないレベルのほんの僅かな音程の狂い。(でも、気持ち悪い。)
子どもは耳が敏感だから、自分の子どもに習わせるのなら、絶対に調律がきちんとされている教室を選びたい。
もっとも、私が音程のズレに妙に敏感なのは、バイオリン経験があり声楽もしているせいもあるかもしれない。
ちなみに、ピアノの音程は平均律で、バイオリンや声楽はピタゴラス音律。実は、音程がわずかに異なる。後者の方が美しい。
【④ピアノ専用足台を使用している】
小さな生徒さんが、足ブラブラ状態で弾くと、肩や腕を力ませて、力のかけ方が悪くなり、フォームも崩れる。
初歩の段階から、高さを調節出来るピアノ専用の足台を使用している教室が望ましい。
しかも、座った時の足台の適正な高さやピアノからの距離を速やかに判断し理想的な位置に調節出来る先生が良い。
足台を使っていない教室は意外と多い。使用の有無、調整の正確さで、先生の身体の使い方への知識や意識が分かる。
※コンクールに出場したり上を目指すお子さんなどは、家庭でも自分専用の足台を使用している。
【⑤聞き取りやすい声】
ピアノの先生の中には、演奏が上手であっても、説明が極端に早口だったり、声がこもりがちの人もいる。
子ども向けのレッスンなら、はっきりゆっくり話して、聞き取りやすい少し高めの声の先生の方が良い。
【⑥リズム感がある】
私はジャズの経験がある。ジャズ仲間の一人は、リズム感が悪い演奏は音を間違っているのと同じだ、と言っていた。
100分の一秒単位でのリズム感の良し悪しが、曲をワクワクさせたり、つまらなくさせたりすることがある。
しかも、先生のリズム感は、地方の訛りと同じように生徒にそのまま受け継がれてしまう、という怖~い現実がある。
ピアノの先生でもリズム感の悪い人は存在する。しかし、もちろん一般の人には分からないレベルでの僅かな違いだ。
【⑦ピアノを現在進行形で弾ける】
例えば、運動の経験があっても、一旦競技を辞めてしまうと以前と同じようには身体が動かなくなるのは周知の事実だ。
ピアノも運動神経や筋力を使うので、日々の練習をしていないと、坂道を転げ落ちるように指が動かなくなってしまうものだ。
教えることは仕事だから続けられるものの、その時間以外にも、雑事、家事、育児、副業と、やることが沢山ある。
忙しい中から自分の練習の時間を捻出して日々の努力を続けることは、口でいうほど簡単なことではない。
でも、私の友人(ピアノの先先)Mさんは、毎年ピアノが上手くなっている。会う度に新曲の魅力を生き生きと語ってくれる。
だから、現在進行形で弾ける腕を維持出来ている先生ならば、本当に音楽への情熱が強い人なのだと断言出来る。
※教える技術は、生徒数や経験年数を重ねるにつれて上がっていくことが多い。
【⑧子どもが好きになれる先生】
習い事には、先生との相性がある。親が良いと思っても、親子で性格や好みが違うこともあり、選択が正しいとは限らない。
嫌いな先生のレッスンだと、やる気も低下して覚えも悪くなりがちだ。やはり、子どもから見て好ましく感じる先生が良い。
【⑨人間的に尊敬出来る】
長く付き合うため、先生の人柄は大事なポイントになる。
映画『アマデウス』のモーツァルトのように、音楽などの芸術の世界では、才能と人柄の良さが一致しない例もある。
【⑩楽しそうにレッスンをしている】
私の師事した先生の中には、弾く技術は高いものの、いつも仏頂面でレッスン中にため息ばかりついていた先生がいた。
生徒の出す音に強いストレスを感じているようだった。あまり教える仕事が好きではないように見えた。
そんな先生に定期的にレッスンを受けていると、次第に自己肯定感も下がり、楽しさや自己表現も小さくなってしまうと思う。
生徒とのコミュニケーションを楽しみ、出来ない状態から上達させる過程に喜びを感じるタイプの先生が良いと思う。
子ども時代の習い事なら、楽しい雰囲気で学ばせたい。月並みだが、サービス精神に溢れた明るい先生が理想的だ。
【⑪きちんとしている】
庭が草ボーボーだったり、部屋がにぎやか過ぎの場合は避ける。
芸術系の人間では、身の回りが整理出来ないタイプは少なからず存在する。
私が草花が好きで、ミニマリストに憧れているから、余計気になるのかもしれない。スッキリしている方が心地好い。
もちろん、金銭面は長く付き合わないと分からないため、最初に見極めることは難しい。
ただ、私の経験上では、その人の部屋の状況とお金の管理などの感覚は、ある程度一致しているように思う。
確定申告もきちんと行っている先生が望ましい。社会的なことが疎かったり脱税していることは、マイナスイメージだと思う。
【⑫個人情報を守ってくれる】
教室業では、写真を出した方が宣伝になるため、生徒さんのレッスン風景や顔写真をHPやSNSに掲載する教室も多い。
また、実名を出している教室もある。確かに、写真や実名を出せば説得力があるため、新規の方へのアピール力は高い。
それを見て、「◯◯ちゃんが通っているなら、私もやりたい!」と言うお子さんもいるかもしれない。広告効果が確かにある。
しかし、親の立場としては、不特定多数の人が訪れるネットに子どもの顔や名前を晒したくない。リスクを避けたいと思う。
私が保守的なだけかもしれないが、個人情報を大事にして、顔や実名を公開していない教室の方が、安心だと感じる。
【⑬月謝などの情報公開をしている】
情報がきちんと公開されている教室を選ぶ。肝心な情報が抜け落ちている場合、何となく信用出来ない感じがしてしまう。
例えば、ホームページのどこにも月謝の表示が無かったり、月謝を掲載していても時間や年間回数が分からないのはNGだ。
ほとんどの人は、月謝の金額だけに気を取られて見落としがちだが、レッスン時間や回数は、実はとても重要なポイントだ。
ピアノを弾くには、脳も身体も耳も使う。反復練習が必要だし、せっかく覚えてもレッスン間隔が空くと忘れてしまうものだ。
もし、一回のレッスン時間が短すぎたり、年間回数が非常に少ない場合には、あまり上達は見込めない。
それは、成長スピードを、わざと遅くしているようなものである。能力向上という意味では、むしろコスパが悪くなるのだ。
また、同業者に手の内を明かしたくないという秘密主義の教室も存在する。
その場合、後出しじゃんけんのように都合良く条件や金額を変えることも可能だ。
でも、それでは教室に通う既存の生徒さん達への公平性が薄れてしまう。誠実性に欠けているように感じる。
情報社会である現代では、外部へ向けての教室の透明性は、とても大事である。
何度も電話したり沢山の質問をする必要が生じてしまう事自体、効率が悪く、お客様へのサービスが悪いように感じてしまう。
【⑭程よい生徒数の教室】
まず、生徒がほとんどいない教室は選ばない。辞めてしまう理由が何かあるかもしれないし、経験値が低いと感じるからだ。
では、生徒数が非常に多い人気教室がベストかというと、教師の立場から考えてみると、やや微妙である。
ずっと前に、委託された教室で希望者がどんどん増えてしまい、なんと1日12人(!)もの生徒さんを教えていた時期がある。
30分刻みで12人の生徒さんが次から次へと訪れる。6時間ぶっ続けでレッスンするために、集中力を保つのが大変だった。
レッスン時の先生の耳と身体は、炭治郎の全集中のような状態が続く。普通の人が思っているよりも脳の消耗が激しい。
個人教室の場合には、レッスン時間以外に、清掃、練習、営業活動、連絡、会計、教材の用意などの雑用仕事もしている。
だから、生徒数が明らかに多過ぎる教室は、先生が疲労困憊しているか、手抜きしているかのどちらかになりやすい。
もちろん、体力には個人差があるが、限界を超える人数を抱えると、教室のサービスの質が落ちてしまうことは避けられない。
【⑮大手や中規模音楽教室を避ける】
曜日ごとに先生が変わる大きい教室は、先生の情報を出さない事がほとんどである。従って、先生のことが全く分からない。
また、労働条件などが良くない教室の場合は、人の入れ替わりが頻繁だったりする。(数ヶ月で担当が変わる時も。)
従って、良い先生に出会えたとしても、辞めてしまう可能性もある。何かの都合で曜日を変える時も、別の先生になる。
では、その先生の自宅にレッスンに行けばいいと考えがちだが、大手は、わざわざ先生の自宅から遠い教室を指定している。
生徒を引き抜かれないための対策だ。発覚した場合には、講師側に違約金の支払い(ペナルティ)が発生することもある。
長期的に見ると、最初の段階から先生を選べず、何回も変わる可能性を考えるとデメリットが多いのでは?と感じる。
これは、先生の入れ替わりが激しい教室に通っていた私のリアルな感想だ。当時子どもだった私には、他の選択肢が無かった。
先生が変わると指導も変わる。その都度、ロスタイムと言うべき慣れるまでの余計なストレスと時間がかかることは否めない。
【まとめ】
自分のことを棚に上げて、あれこれ挙げてみた。あくまでも、『私の独断と偏見による個人的な選ぶ基準』である。
マニアック過ぎる項目のいくつかは、一般の人には判断が難しいため、全く参考にならなかったかもしれない。
それに、全て当てはまる教室(先生)は、かなり少ないに違いない。
私は、音楽を知らない両親が(近いという理由だけで)教室を選んだために、専門の道に入ってから苦労した経験がある。
教室(先生)選びは大事だということが、身に染みて分かっているために、かなり本気で記事を書いてみた。
ところで、ピアノの先生を探す時、まずはホームページを見ると思う。でも、最近は、どこも似たり寄ったりの傾向である。
だから、ブログ、Instagram、YouTubeなどSNSの方が、先生の考え方、個性、生活、雰囲気、特徴などが分かると思う。
14項目の中で、私が外せないと思う条件は、⑧⑨⑩⑪の4つだ。
毎週のように通うマンツーマンレッスンでは、子どもは先生から何らかの強い影響(波動)を受けてしまうものだ。
母親目線なら、まず、子どもが教室に楽しく通えて、人間的にも良い先生に習わせたいと感じるものだ。
※ただし、本当にピアノを上達させたい場合には、①②③④⑥⑦が必須条件になる。
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