普段は野球はあまり見ないのだが、WBCでの日本が優勝するまでの試合が、本当に面白かった。
決勝戦で大谷選手とトラウト選手の対決で優勝が決まった時は、思わずガッツポーズをしてしまった。
今までの日本では、どの分野であっても『◯◯一筋』といった一つに長けている職人タイプが好まれていたように思う。
大谷選手の二刀流を受け入れる人は、最初は少なかった。成功しないと思われていた。過去に事例が無かったからだ。
それを、見事に証明してみせた大谷選手は、スーパーヒーローのような扱いをされている。
ここに至るまでの大谷選手の厳しい道のりは、計り知れない。葛藤や孤独を感じる日々も多かっただろう。
私も、大谷選手から勇気をもらった。
ともすると、『器用貧乏』と言われがちなマルチタイプの人間にとって、二刀流の大谷選手の存在は希望の光である。
ピアノの先生は、ピアノ以外のことには深く手を出さない人が多い。ピアノは、他の楽器より練習時間が必要だからだ。
私は、同業者の友人から「なぜ、そんな色々な事をやってるの?ピアノがあるじゃない。」と言われることが多い。
理解しにくいかもしれないが、私の頭の中では、ピアノ、歌、英語の3つ全てが繋がっている。
例えば、沢山の音を同時に出せるピアノは機械的な演奏になりやすい。そのために、歌うように弾くことが大事になる。
一方、歌をやる人の大半は、あまりピアノが得意ではないが、音楽を深く理解したり合わせるためには読譜力が必須だ。
英語の場合は、音楽とあまり関係が無いのでは、と思う人がいるかもしれない。
しかし、演奏は母国語からの影響を強く受ける。日本語はのっぺりしているが、外国語はアクセントも強く立体的だ。
日本語に無い発音の子音が多数あるために、耳の感度が鋭くなる。当然、音楽のフレーズに対する意識や感覚も変わる。
英語の歌を歌う時に、正しい発音で意味を理解して歌えるし、他の言語で歌う時にも特徴を掴みやすい。
また、外国語に触れたことで、日本語の美しい響きにも改めて気付けて、それは日本の歌詞で歌う時にも役立っている。
そのように、バラバラに見えても、実際は互いが繋がって相乗効果が得られる。
音楽業界では、ピアニストの反田恭平さんが、指揮もこなして会社も立ち上げている。音楽ラジオのMCもやっている。
YouTuberの角野隼人さんは、クラシック以外の様々な分野の音楽のアレンジもして、ピアノの可能性を広げている。
ただ、マルチタイプに共通するデメリットを挙げるなら、一つにかける時間が少なくなってしまうことだ。
もちろん、第一線で活躍する彼らの場合は、それを覆すほどの高い集中力を持っていて、時間管理も上手に違いない。
ところで、上の写真は Asahi Weekly の表紙だ。大谷選手のかぶとの上部に可愛い獅子が乗っているのがユニークだ。
中学生の英語のレッスンで、この写真を見せて、「日本のかぶとは英語でなんて言うかな?」とクイズを出してみた。
正解は、『samurai helmet』。英語になると、ニュアンスが変わるのが面白い。
かぶとの定義は、『頭部を守る防具』だから helmet に違いないが、兜という日本語には威厳が含まれるように思う。
カウボーイハットを兜に変えて、さりげなく日本の伝統文化を発信しているところに、大谷選手の新たな才能を感じる。
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