森山良子さんの『さとうきび畑』は、やっぱりスゴかった!


先日、森山良子さんのコンサートに行ってきた。

私は同世代ではなく、彼女の曲に詳しくないのだが、足を運んだのには理由がある。

『さとうきび畑』を、どうしても生で聴きたかったからだ。

以前、この曲を聴いた時、とても良い曲だと感じた。すぐ歌えそうと思った。

音域も大して広くない。リズムも難しくない。でも、歌いこなせなかった。曲との距離を縮められなかったのだ。

第一の理由は、歌詞の内容だ。のんびりしたメロディーに反し、歌詞は沖縄戦の悲劇を伝えているため、暗くて重たい。

第二の理由は、歌詞の長さだ。普通の歌詞は3番位までしかないのに、これは、なんと11番(正しくは11連)まである。

シンプルな伴奏にシンプルなメロディーを11回も繰り返すという、はっきり言って退屈極まりない構成を持つ曲なのだ。

伴奏のアレンジを複雑にして盛り上げるという手法さえも使わずに、飽きさせないように歌うことは、至難のわざだ。

この曲を、森山良子さんは、どんな風に歌うのだろうか?

コンサートで、この曲が始まった。会場の拍手がひときわ大きい。

ギターを肩から掛けた森山良子さんが、歌い始めた途端、会場がシーンとなる。

ざわわ、ざわわ、ざわわ♪こんなオノマトペ(擬音)から始まる歌は、他にあっただろうか?と、ふと思う。

10分近くかかる長い曲なのに、最初から最後まで、会場の全ての人達が彼女の歌に聞き入っていた。

森山良子さんは、言葉を伝える表現力が並外れている。まるで、さとうきび畑に立っているかのような気持ちになる。

歌っているけれども歌っていない。つまり、詞の朗読がメインなのだ。でも、こんな語り部的な歌い方は、実は難しい。

メロディーや声の美しさが前に出ると、歌詞の存在が薄くなってしまう。歌詞に感情移入をしすぎてもドン引きされる。

さりげなく歌っているように見えるけれども、全てのバランスが絶妙なのだ。

そんなわけで、森山良子さんの生の『さとうきび畑』は、想像以上に素晴らしかった。

意外にも、森山良子さんは、この曲との出会いを、こう打ち明けている。

戦争を扱った重たい歌詞を読んだ時、「私に、こんな歌が歌えるのかしら?」と、とても戸惑ってしまったそうだ。

レコーディングした後も、歌うことに自信が持てず、この曲を封印していた時期もあったという。

ざわわ、ざわわ、ざわわ
ゆれるさとうきび畑は
ざわわ、ざわわ、ざわわ、
風が通りぬけるだけ

50年以上前に作られたこの曲は、今も色褪せていない。ウクライナとロシアの戦争で、同じ悲劇が繰り返されている。

そして、この曲は次の言葉で締めくくられる。「この悲しみは消えない」

平和へのメッセージとしても『さとうきび畑』が歌い継がれてゆくことを願う。

指導歴30年以上、TOEICスコア805点で英検準一級も保有する、歌って弾けるピアノ教師が記事を書いています♪

オリジナルの記事を載せています。当サイト内の文章、情報(内容)、写真等の無断掲載及びリライトは、ご遠慮下さい。

記事一覧を見る