今日は、ショパンコンクールで第二位を受賞したピアニストの反田恭平さんの本を読んでみた。
『終止符のない人生』という題名の新刊だ。
本の表紙の写真や装丁は、白黒を基調としてピアノを意識させるデザインだ。
注目して欲しいのは、裏表紙の反田さんの手の写真だ。なぜなら、鍛練を積んだピアニストの手はこんな感じだからだ。
指の関節の間の肉付きが良く、小指下側の筋肉は大きく膨らんでいる。
ちょっとだけ丸っこく見える指や厚みのある手が、強くて美しい音を生み出す。
さて、本の中では、幼少期から現在まで、様々なエピソードが綴られている。
まず、小学校時代、怪我をするまではサッカーメインの生活だったという。
高校では金髪にビーサンという格好で、文化祭ではミュージカルの主役もしたという。たくさんの台詞を覚えたそうだ。
また、ロシア留学では、かなりサバイバル的な生活を経験している。そして、一年でロシア語をマスターしたという。
色々な人にサポートを受けているのも、彼の特徴だ。ピアノの先生が、自腹で彼を海外に連れていってくれた話もある。
際立った才能のある人間の存在は、指導側の人間を本気にさせ、使命感に火を付けてしまうものなのかもしれない。
そして、今では、交流の輪が音楽関係者だけでなく、会社経営者から芸能人まで広がっている。
エピソードから分かることは、まず、サッカー経験者なので、ピアノだけの人よりも瞬発力や持久力があることだ。
次に、台詞や馴染みのないロシア語を短期間で覚えられるので、すごい集中力と記憶力と語学のセンスがあること。
また、人との交流の輪がどんどん広がることから、人間的魅力があってコミュニケーション能力が高いことが分かる。
つまり、ピアノ以外にも、たくさんの才能を持ち合わせているのだ。
ライブ配信をプロデュース、会社を設立したり、オンラインサロンなど、次々と活動を広げ、指揮者も目指している。
ピアノ界のキンコンの西野さんやホリエモンなのでは、というくらいアイディアが止まらない。視野がとても広いのだ。
ショパンコンクールの曲のリサーチの仕方や考え方も、まるで大きなプレゼンを周到に準備するビジネスマンのようだ。
コンクールで目立つようにと、髪型をサムライヘアにしたりと、自己プロデュース能力にも長けている。
彼は、大リーグの大谷選手のようにピアニストなのに二刀流、いやそれ以上に挑戦している特殊なタイプなのである。
音楽家で起業家の精神を持つ人は稀だ。特に、ピアニストは、ピアノしか出来ないタイプが圧倒的多数である。
ピアノは早期教育が必要な楽器のため、親がマネージャーのように身の回りのことを全てやってくれた人が多いからだ。
でも、クラシック音楽が人気のない昨今では、ピアノ以外の能力が仕事をする上でも重要になることは間違いない。
本の中で、特に私の心に刺さった文章を抜粋で紹介。
『楽器の練習ばかり長時間やっている人は、演奏の引き出しが少ない。音楽と関係ないことに平気で時間を費やし、多趣味な人ほど演奏の引き出しが多いものだ。ー(省略)ーそうした体験は、すべて音楽家にとっての財産になる。』
『天賦の才が備わっていれば、、、、、と思うことなんて日常茶飯事です。そんな紆余曲折を経てなんとか音楽を続けています。』
希望の光を感じさせるこれらの文章の根底は、他の分野の人達にも当てはまって参考になるのではないかと思う。
『ピアノの森』という漫画がある。主人公が指導者に導かれてショパンコンクールで優勝するという師弟関係の物語だ。
一方、この本の主人公の反田恭平は、自分自身で道を選択し切り開いてゆく。現代版『新・ピアノの森』とも言える。
この先も、彼はどんどん変化して私達を驚かせてくれるに違いない。
●ブログ記事『反田恭平さんのコンサートに行ってきました♪』
https://www.mintpiano.net/blog/109292/
●ブログ記事『反田家の赤ちゃんは(たぶん)スゴイ!』
https://www.mintpiano.net/blog/106160/
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