音楽用語の『フルコン』という言葉を知っている人は少ないかもしれない。
ゲーム系YouTuberのことでもなく、車の用語でもない。
フルコンとは、フルコンサートグランドピアノの略である。(ピアノ関係の人しか知らない用語かも。)
簡単に言えば、大きなホールでも最後列まで音が十分に届く巨大なグランドピアノだ。
ピアノの先生やピアニストは、フルコンに憧れている。響きが豊かだからだ。
コンサート会場などで使われる奥行きの長いフルコンは、とても存在感がある。
協奏曲などでも、オーケストラにも負けない大きな音で響かせることが出来る。
主に、スタインウェイ社のグランドピアノが使用されていることが多い。
私の住む自治体では、年に数回、市民ホールのグランドピアノの解放日がある。
時間の都合が合えば、申し込みをして弾きに行っている。スタインウェイのフルコンを弾くのが、本当に楽しみなのだ。
なぜ、楽しいかというと、家のピアノより音楽の表現の幅が広がるような気がするからだ。
音量で言うと、家のグランドピアノが10段階だとすると、フルコンは20段階くらいある。微妙なニュアンスも出せる。
以前、家で練習していた曲が、細かく動く部分がどうしても上手く弾けず、私のテクニック不足だと思っていた。
でも、フルコンを弾いた時に奇跡が起きた。難なく弾けるのだ。ピアノのハンマーの反応が素早いことを実感した。
この経験から、スタインウェイのフルコンは、ピアノ界の超ハイスペック機器と言うべき優れた楽器だと思っている。
「あぁ。このピアノで毎日練習出来たらいいなぁ。」と思う。すごく上達しそうな気がする。
次の日から、私の夢想が始まる。スタインウェイのフルコンは、約2,000万円だ。現実的には、まず無理だなぁ。
でも、もし高額の宝くじに当たったとしたら?そこから、私の空想(妄想?)は、どんどん広がっていく。
購入したとして、今の八畳のレッスン室に入るかな?フルコンの奥行きは、最小のものでさえ2m70cmもある。
実際にメジャーで部屋の長さを測ってみると、端から端になるが、ギリギリ部屋に入れられそうだ。
かろうじて、ピアノの椅子も置くことが出来るが、すぐ後ろは壁で通り抜け出来ない。斜めに配置した方が良いのかな?
あと、総重量500kgの重さに、我が家の床は耐えられるだろうか?新たな床の補強工事が必要かもしれない。
そもそも、グランドピアノは広い空間用の楽器だ。小さめの私のグランドピアノでさえ、フォルテシモはうるさい。
フルコンで練習していたら、音量が大きすぎて耳がトラブルを起こしたり、ストレスを感じたりする可能性が高いかも。
耳は音楽家の命だから、守らないと。それなら、新たな建物を建てて、広い空間の中に置いた方がいいだろうな。
でも、2000名収容のホールに楽に響かせられる楽器だから、近所から苦情が来るかも。防音対策の工事も必要だな。
ふと、知り合いのピアノの先生の話を思い出す。
憧れの海外製のピアノを、やっと手に入れたのだが、日本の湿度に弱くて、すぐ調子悪くなってしまうそうだ。
しょっちゅう調律師を呼び、結局、ピアノの部屋は、一年中24時間エアコンを付けっぱなしにしているのだそうだ。
広い空間を、絶えず一定に保つ場合のエアコン代は、一体いくら位かかるのだろうか?調律代金も高いに違いない。
フルコンは、まさにホワイトエレファントと言える。入れ物や防音対策だけでなく、維持にもお金がかかるだろう。
というわけで、あれこれ考えた挙げ句、結局、今のままが一番ストレスが少なそうだ、という結論に至った。
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