私は、以前、レッスンでフリクションのボールペンを使っていた。
元々字が下手な私が、立てた状態のピアノの楽譜に急いで書くと、たまに判読不能の場合がある。
そんな時、ボールペンなのに消せるというフリクションを見付けて、とても便利だと思い愛用していた。
赤ペンでは、花丸を書いたり、出来ない場所に印を付けたり、注意事項を色々書き込んだ。
黒ペンでは、レッスンの日付、リズムパターン、音楽用語などの説明などを書いていた。
ところが、ある日、事件が起こった。
レッスンに来た小4のT君が楽譜を開くと、まるで新しい譜面のように真っ白になっていたのだ。
間近で見てみると、筆圧の跡が確認出来るものの、多数の書き込みがキレイさっぱり消えてしまっている。
「これ、なんで消えてるの?」「何かした?」
「えっ?知らない。」「何でだろう?」
やりかけの曲は覚えているので、仕方なくそこから練習を始める。そして、新たな書き込みをする。
フリクションボールペンで書いた文字は、高温(60℃以上)で消えてしまうという。
車の中が暑かったのかな?でも、さすがに60℃にはならないよな。それに、彼の家から教室まで車で5分もかからない。
ということは、先週車から降りる時に楽譜を車内の直射日光の当たる場所にずっと置きっぱなしにしていたとか?
迎えの時にお母さんに聞きたいけど、ルーズだと暗に責めているように思われてしまうかも。聞くのは、やめておこう。
あれこれ考えながら、テクニックの曲が終わり、もう一冊の楽譜を開いた。
驚くことに、こちらは書き込みがそのまま残っている。消えている場所もない。これは、どういうことなのか?
アクシデント的に消えてしまったなら、必ず両方共に消えているはずだ。片方だけ消えることは、実に不自然である。
ちなみに、レッスンでは、テクニック系の練習曲と曲を併用している。技術の強化は、曲の表現力にも繋がるからだ。
T君は指の筋力が少し弱く、テクニックの本は苦手だった。なかなか丸にならず、日付や書き込みが沢山増えていた。
もしかしたら、テストを隠すのび太のように、それらをお母さんに見られたくなかったのかもしれない。
家のフリクションボールペンの消しゴムで、一つ一つ消していった?その場合、かなり時間がかってしまうはずだ。
でも、フリクションの文字を一気に消すための裏技もある。電子レンジやドライヤーを使うらしい。それかな?
このように、一つの事実から探偵のように色々推測していく。
本人は知らないフリをしていたので、真相は闇だが、楽譜の書き込みの証拠隠滅を試みた可能性が否めない。
そのため、次の週のレッスンからは、T君がテクニックの練習曲をより楽しく弾けるよう心掛けた。
そして、その出来事をきっかけに、レッスンでは消えないタイプのボールペンを使うようにしている。
フリクションのボールペンは消える(消されてしまう)可能性があるため、ピアノレッスンでの使用はNGだ。
※消えてしまった文字は、-10℃以下で再び浮かび上がるという。(当時は知らなかった、、、。)
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