秋の発表会に向けて、準備をスタートした。
まず、発表会で生徒さんが弾く曲を選んでいくのだが、とても時間がかかる。
たくさんの候補曲の中から、生徒さんに合った雰囲気の曲を選んでいく。個性を生かせる曲はないかと、必死に探す。
発表会の曲選びは、スタイリストがお客様の魅力を引き出す服を数々の洋服の中から選んでいく、そんな作業に近い。
そうして、レッスンで発表会の曲の指導が始まる。
特に、難しいと思うのは、初めて発表会に出る生徒さんの曲の進み方のスピード調整とメンタルケアだ。
発表会では、普段よりワンランク上の難しい曲に挑戦させている。負荷をかけることで、より成長出来るからだ。
最近の生徒さんは、習い事が多くて練習時間が少ないから、余裕を持って半年前くらいから曲を始めている。(私の場合)
それでも、練習不足のために計画通り進まずに、仕上がりがギリギリになってしまう生徒さんが、たまにいる。
直前レッスンでもミスを連発し、本番への焦りから涙目で弾いていたりする。当然、本番の成功確率は低い。
では、イベント好きで発表会に非常に意欲的、早目に仕上がった生徒さんが良いかというと、一概にそうとも言えない。
そのタイプでは、早く仕上がった分、気持ちにゆるみが出て、曲がどんどん崩れていく可能性もあるからだ。
曲に飽き始めているのが、明らかに音に表れている。慣れているという油断から、本番で思わぬ場所でミスが出たりする。
また、地味にコツコツ努力する真面目なタイプは、普段から特に問題がなく、発表会でも全く心配ないように見える。
ところが、そのようなタイプの一部に、本番に弱く、信じられないほどに崩れてしまう生徒さんがいる。
逆に、ボロボロだったのに、本番に別人のように上手く弾ける生徒さんも、まれにいる。(マイペースで鈍感タイプ)
このように、発表会の本番での結果は、時に不条理だ。本人の努力や普段の実力と必ずしも比例しないことがあるからだ。
ある意味、本番は出たとこ勝負で、普段のレッスンから想像も付かないようなことが起こり得るものである。
二回目以降は、前回の反省点を元に傾向と対策を行うことが出来るのだが、初めての発表会では全く予測不可能だ。
だから、ベテランのピアノの先生でも、初めて発表会に参加する生徒さんの本番に関しては、毎回手探り状態である。
人事を尽くして天命を待つ、そんな思いで、生徒さんの演奏をハラハラしながら聴いている。
オリジナルの記事を載せています。当サイト内の文章、情報(内容)、写真等の無断掲載及びリライトは、ご遠慮下さい。