実は、ピアノ先生の中には、専攻が声楽や他の楽器だった人や幼児教育専攻だった人も混じっている。
それでも、以前は、全体の9割程度は音大や音楽専門学校などでピアノ専攻だった人が占めていたように思う。
ところが、最近は幼児教育専攻出身のピアノの先生の割合が、以前よりもずっと増えてきている。
主な理由は、音楽は学問として人気が無くなってしまったからだ。当然、ピアノを専攻する人も減っている。
そもそも、音楽系の学校の学費は高い。特に、ピアノは早期から始める方が有利で、多くの練習時間が必要とされる。
それなのに、卒業後に音楽関連の仕事に就くと、給料や待遇面で厳しくなることは否定出来ない。
つまり、音楽を仕事に選んだ時点で、社会人として安定した生活を送ったり、普通の人生設計をすることが難しくなる。
かけた時間やお金に対する費用対効果が甚だしく低い。それが芸術系で仕事をする人達の悲しい現実である。
そのため、最近では、せっかく音楽を専門的に学んでも、一般企業に就職する人も珍しくない。
私の母校(高校)の音楽科も、今年度は30人定員のところに受験者がたった6人という有り様だった。寂しい限りである。
また、近年の傾向としては、その数少ない音楽科の生徒の多くが管楽器か声楽で、ピアノ専攻が激減しているという。
音楽科の生徒数よりも、教える側の講師数の方が多いという状況だそうだ。(!)
全国的にも、音楽系の学校は軒並み生徒数が減っているという。私立では経営難に陥っているところも多い。
ある楽器店で講師をしていた音大卒の友人は、「若いピアノの先生達は元保育士さんばかり。」と嘆いていた。
ちなみに、幼児教育専攻の学費は音楽系より安い。ピアノの授業はあるが、童謡が中心でレベルはバイエル終了程度だ。
コスパを追求する現代の感覚では、専門的にピアノを学ぶという行為は、単にお金と時間の無駄に思えるかもしれない。
でも、沢山の課題や試験、音楽仲間との交流、ユニークな先生達の指導などの経験は、人生での貴重な宝物だと感じる。
音楽は単なる知識ではない。ピアノ専攻だった先生は、長年の努力や経験でしか得られない技術と感性を持っている。
このままだと、将来的には、ピアノ専攻出身のピアノの先生の方が、業界での少数派になってしまうかもしれない。
ちょっと残念な状況である。
※最近では、ピアノを習った経験があるOLさんや主婦などが副業としてピアノを教えることも増えているそうだ。
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