大リーガー大谷選手の二刀流は素晴らしい。投手と打手の両方で活躍している。
音楽界でも、複数の楽器をこなす器用な人がいる。だが、大抵メインの楽器があり他方は極めるレベルまではいかない。
それに、両方の楽器を同時に演奏するわけではない。
『二刀流』とは、刀を左右の手に一本ずつ持って戦うことから来ているらしい。鬼滅の刃の伊之助のイメージだ。
そう考えると、弾き語りは、ある意味では二刀流の定義に近いのでは、と思う。
ギターの弾き語り人口は多いが、ピアノは比較的少ない。ピアノ弾き語りはギターより難易度が高いと言われている。
弾き語りは、同時に行うため、ピアノと歌のパフォーマンスは両方が元々のレベルの70パーセント位に落ちてしまう。
当たり前だが、ピアノや歌だけにしぼった方が、一つのことに集中出来るために上手く出来る。
ピアノ弾き語りで強く感じることは、椅子に座った状態では、立って歌うよりも高音が出しにくくなることだ。
けれども、ピアノは重過ぎるために、ギターの弾き語りのようにストラップを使用して肩に下げて歌うことは出来ない。
だから、髭男dismの藤原さんのように立った状態でピアノを弾いてみる。そうすると、高音が出やすくなる。
ところが、今度はピアノが弾きにくくなる。斜め上から弾く奏法になるため、これはこれで難しい。練習が必要になる。
座った状態だと声を飛ばす(伸びやかに出す)のも不利になる。発声の時、立って歌うより背筋を使えなくなるからだ。
例えば、ボールを両手で投げる時、立って投げるのと座って投げるのでは、飛距離に差が出る。それと似た現象になる。
また、ピアノ弾き語りでは、マイクとの距離を一定に保たなければいけない。距離により音量が変化してしまうからだ。
実は、ピアノを弾く時には、メロディーを歌おうとしたりリズムを取ったり、無意識のうちに身体がかなり動いている。
その微妙な揺れ(動き)を、意識的に抑えていかないといけない。すると、今度はノリが悪くなったり、演奏が固くなる。
だから、身体の自由度ではミュージカルで使うピンマイクの方が本当は望ましい。(普通のマイクの方が高性能だが。)
もう一つの難しさは、歌詞である。音程やリズムは取れても、歌の表現や響き(母音や子音の処理)に苦戦する。
歌だけだったら言葉をコントロール出来るはずなのに、両手でピアノを弾くために余裕が無くなってしまう。
結論を言うと、ピアノを弾く時と歌う時は脳の使い方が明らかに違う。弾き語りはバランスが取りにくく綱渡りに近い。
集中力が少しでも途切れると、演奏が無残にも崩壊してしまうのである。二刀流は、自滅する危険性も伴うものなのだ。
その点、広瀬香美さんは、弾き語りの座った状態から高音を出せるし声量もある。二刀流の職人技のスゴさを感じる。
※コロナ禍で音楽仲間との練習が出来ずに、自主練としてピアノ弾き語りを練習中。
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