ミント音楽教室

私は、１日だけ、ハワイアンバンドのメンバーになったことがある。

音楽業界では、人が急用や体調不良で来られない時の代役をトラ(エキストラの略)と呼ぶ。私はトラで入ったのだ。

ハワイアンの服装で来て、と指定されたので、タンスの奥から派手なアロハシャツを引っ張り出した。

着なれていないため、自分だけが浮いている気がして、ステージでは何だか居心地が悪い。

ハワイアンバンドのキーボード奏者は、コードを押さえるくらいなので、楽譜が読めれば弾くことはさほど難しくない。

アマチュアのフラダンスの発表会の伴奏として、当日会ったメンバー達と10曲ほど弾いた。

でも、不思議なことに、私には、どの曲も似ているように思えてしまう。

参加者達は、子どもから高齢者まで年齢層も幅広く、お揃いのコスチューム(ムームー)を着て、とても楽しそうだった。

そのあと、偶然、友人から「フラの体験レッスンに行かない？」と誘われた。好奇心で体験レッスンを受けてみた。

とても面白かった。手の動きは手話のようなものらしい。腰を落として踊るのは、見た目よりも筋力が必要だった。

「初めてにしては上手！」と周りの人達から褒められた。(お世辞かも。)

でも、やはり、どの曲も同じように聴こえてしまう。だから、その時点で、私にはフラの才能が全く無い、と確信した。