ピアノの発表会を見に行った親御さん達は、どうして普段よりミスが多いのか?と首をかしげるかもしれない。
その場合に、我が子は本番に弱いとか、ピアノの先生の教え方が悪いとか、どうか思わないで欲しい。
発表会では、90パーセントの生徒さんが普段より弾けなくなってしまうものだ。原因の大半は、緊張による。
どんなに練習したとしても、本番の結果は分からない。よく、オリンピックには魔物がいる、と言われるがそれに近い。
その魔物とは、実は本人の心の無意識の部分に潜んでいるのだが、それをコントロールすることは、大人でも難しい。
ステージ上で、たった1人でピアノを弾くことは、想像以上に勇気が要ることであるということを理解して頂きたい。
だから、私は、初めて発表会を経験する小さな子達の背中を舞台袖で見ていると、毎回、その姿に感動してしまう。
とても怖いけれど、勇気を奮い起こしてステージに歩いてゆく。これは、経験してみなければ分からない特別な感覚だ。
たくさんの人の視線が集まるステージのピアノには、特別な空気感が漂っている。それに飲まれてしまうことも多い。
黒いグランドピアノが更に巨大化して見えるし、ステージライトが特別まぶしく感じる。
音楽表現においては感受性の豊かさはプラスになるのに、発表会ではネガティブな方向へ向かってしまう場合がある。
しかも、それは潜在意識など、レッスンではどうにもならないメンタルの問題を含んでいる。本番力は個人差が大きい。
本当は、親御さん達にステージでピアノを実際に弾いて欲しいと思っている。どんなに難しいかが体感出来るからだ。
例えれば、大勢を前にして、原稿無しで壇上でプレゼンをする状況。ステージでのピアノ演奏は、それに近い感覚だ。
手や足が震える、心臓がドキドキする、手汗をかく、お腹が痛くなる、頭が真っ白になるなど、人それぞれ症状は違う。
だから、保護者の皆様、全ての参加者達の勇気に対しても、演奏後は温かい拍手をお願いします。
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