生徒さんの発表会の曲の仕上げをする時には、毎回メトロノームと必ず合わせて身体の中にリズムを入れさせる。
本番で、緊張すると心拍数が上がりテンポも速くなってしまうからだ。速く弾くと、大抵は指が転んでボロボロになる。
でも、私も小学生の時に発表会で速く弾いてしまった経験がある。それも、暴走だ。
速いことに気付いたものの「弾き直しはしない方がいい。」と日頃から先生から言われているので、そのまま弾き続ける。
問題は、レッスンでも家でも弾いたことのない程の速過ぎるテンポだったこと。
まるでブレーキのないスポーツカーを運転しているような感覚だった。でも、集中して奇跡的に何とか最後まで弾けた。
音楽的には表現が薄くて大失敗だったのに、なぜか会場の拍手は大きかった。
観客にとって、ピアノの速弾きはスリル感があって面白かったのかもしれない。
ステージ袖に戻ると、先生がこわばった顔で「よかった。」と言った。もちろん、転ばなくてよかった、の意味だ。
※本番での速弾きは、パフォーマンス効果はあっても、音楽的では無くなって高いリスクが伴う。成功確率は極めて低い。
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