今、私は友人の披露宴の円卓に座っている。招待されたのは生まれて初めてだ。
テーブルは花で溢れ、会場全体が華やかな雰囲気に包まれている。
ワクワクと同時に、少しだけドキドキしている。演奏を頼まれているからだ。
曲目は、メンデルスゾーンの『結婚行進曲』。新郎新婦入場の時に弾く予定だ。
そして、ついにその時がきた。私はスタンバイしている。「新郎新婦の入場です!」と司会者が声高らかに言う。
その瞬間、会場が真っ暗になり、入口に立つ2人にスポットライトが当たった。
「えーっ?」想定外のことが起きた。私が弾く場所も真っ暗だ。どうするべきか数秒で考える。
【プランA】スタッフさんに「手元が見えないのでライトを至急持ってきて下さい。」と声を掛ける。
【プランB】いちかばちかで、このまま暗闇の中で弾き始める。
私は、すかさずプランBを選んだ。ここで私が進行を止めてしまったら、友達のハレの舞台に水を差してしまう。
もちろん楽譜は見えない。暗いために黒鍵と白鍵もあまり差がないけれど、手の感覚だけを頼りに弾き始める。
それにしても、長身でスリムな友人のドレス姿は、とても素敵だ。客席の人達やスタッフまでもが彼女に見とれていた。
だから、誰一人として私の状況に気付かない。でも、なんとか無事に演奏出来た。○○ちゃん、結婚おめでとう!
※ウェディングの演奏では、暗闇の中で手元を照らすためにクリップライトを使う。設置し忘れたのはスタッフのミス。
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