バイオリンを習う場合は、身体の大きさに合わせて楽器の大きさを変えていく。
ピアノを弾く時には、最初から大人サイズを使う。小さい生徒さんには、きっと巨大鍵盤のように見えているはずだ。
でも、手も身長と同じように少しずつ大きくなるため、無意識に鍵盤と手の距離感覚を調節していくので問題はない。
ところが、その常識に当てはまらない生徒さんが過去に一人だけいた。
私がピアノを教えていたY君(当時小6男子)だ。弾ける方で音もキレイだったのに、ある日突然ピアノが下手になった。
体調悪いの?と思ったが顔色は良い。腕も怪我してなさそうだし、反抗期?
答えは、すぐ分かった。4才からほぼ毎週見ている彼の手の指が、なんと1センチ以上長くなっているのだ!
だから、片っ端から音を外す。例えばオクターブ(ドからド)もドからレになる。黒鍵も落ちまくっている。
よく、スケートの選手が身長が急に伸びるとジャンプが跳べなくなったり精度が落ちるというが、それと同じだ。
Y君にしてみれば、ピアノの鍵盤の幅が突然狭くなってしまったのだから、無理もない。簡単なフレーズもミスばかり。
3ヶ月ほど苦戦していたが、その後何事もなかったかのように普通に弾けるようなり、彼特有の美しいタッチも戻った。
ホッとしたのと同時に、3ヶ月でミリ単位の感覚を修正出来る子どもの能力はすごい!と感心した記憶がある。
※手の小さい人は「もし、あと1センチ指が長かったら」と言うが、願いが叶ったらピアノが全然弾けなくなるだろう。
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